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一つの建物から、街の未来へ

【ARCHITECT COLUMN|VOL.40】【一級建築士が教える】「その壁、本当に壊せますか?」― 間仕切り壁と構造壁。見た目だけでは判断できない。―中古マンションのリノベーションで、「この壁を撤去して広いLDKにしたい」「和室とリビ...
19/10/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.40】

【一級建築士が教える】

「その壁、本当に壊せますか?」

― 間仕切り壁と構造壁。見た目だけでは判断できない。―

中古マンションのリノベーションで、「この壁を撤去して広いLDKにしたい」「和室とリビングを一つにつなげたい」というご希望をいただくことがあります。

しかし、壁はすべて自由に撤去できるわけではありません。

建物を支える構造壁と、部屋を区切る間仕切り壁では、役割が大きく異なります。

今回は、壁の撤去を検討する際に知っておきたいポイントを解説します。

■ ① ラーメン構造と壁式構造の違い

RC造マンションには、主にラーメン構造と壁式構造があります。

【ラーメン構造】

柱と梁を主体として建物を支える構造です。住戸内の非構造壁は撤去できる場合があり、比較的自由に間取りを変更できます。

ただし、柱・梁・構造上必要な壁を自由に撤去できるわけではありません。

【壁式構造】

壁と床スラブなどで建物を支える構造です。構造上必要な耐力壁を自由に撤去することはできません。

重要なのは、建物がどのような構造で成立しているかを確認することです。

■ ② 壁の厚さや見た目では判断できない

「薄い壁だから撤去できる」「厚い壁だから構造壁」という判断は正確ではありません。

コンクリート壁でも構造上主要な役割を持たない壁があります。一方、仕上げや下地によって厚く見えている壁もあります。

壁の厚さや表面の仕上げだけでは、撤去の可否を判断できません。

■ ③ 意匠図だけでなく構造図を確認する

意匠図には、間取り・寸法・建具・仕上げなどが記載されています。

一方、構造図には柱・梁・壁・床スラブなどの構造部材について、配置や寸法、配筋などの情報が記載されています。

意匠図では単なる壁に見えていても、構造図を確認すると耐力壁として設計されている場合があります。

そのため、壁の撤去を検討する際には構造図の確認が重要です。

ただし、築古マンションでは構造図が残っていない場合もあります。

その場合は、必要な追加調査や構造検討を行い、安全性を確認できるか慎重に判断する必要があります。

■ ④ 図面と現況が一致するとは限らない

ここが今回、特にお伝えしたいポイントです。

既存建物のリノベーションでは、図面に記載されている内容が、必ずしも実際の建物と一致するとは限りません。

例えば、施工時の変更、過去のリフォーム、図面に記載されていない配管、想定と異なる壁の構成などです。

そのため、設計段階では既存図面と現地調査をもとに撤去の可能性を検討します。

そして、解体時に実際の壁・躯体・設備の状況を確認し、撤去の可否を最終判断することが重要です。

ただし、構造上の安全性が確認できない壁を、判断のために先行して撤去することはできません。

必要に応じて部分的な先行調査や構造設計者による検討を行います。

また、解体時に想定外の状況が判明すれば、設計変更や追加工事が必要になる場合もあります。

■ ⑤ 構造上撤去できても、自由に壊せるとは限らない

マンションでは、構造躯体は一般的に共用部分として扱われます。

そのため、構造上撤去できる可能性があっても、区分所有者の判断だけで撤去できるとは限りません。

管理規約や管理組合の承認なども確認する必要があります。

また、壁内部には給排水管・電気配線・換気ダクト・通信設備などが通っている場合があります。

構造だけでなく、設備や管理上の制限も含めて検討します。

■ ⑥ 築古マンションではアスベストにも注意

築古マンションの解体・改修工事では、石綿(アスベスト)含有建材の事前調査も重要です。

壁材・下地材・接着剤・天井材などに石綿が含まれている可能性があります。

見た目だけで含有の有無を判断することはできません。

解体・改修工事では、法令に基づく事前調査が必要です。

石綿含有建材が確認された場合には、適切な飛散防止措置や廃棄物処理等が必要となり、工事費や工程に影響する場合もあります。

構造上撤去できる壁であっても、安全に解体できるかは別の確認事項です。

■ ⑦ 撤去できない壁を設計に活かす

壁を撤去できないからといって、希望する空間を諦める必要はありません。

例えば、既存の壁を利用して収納を設ける。壁の両側に異なる用途を配置する。柱や梁をデザインの一部として取り込み、照明や素材によって存在感を調整する。

こうした工夫によって、構造上の制約を空間の特徴へ変えることもできます。

リノベーションでは、すべてを取り払うことだけが正解ではありません。

■ ⑧ 中古マンション購入前の確認も重要

リノベーションを前提に中古マンションを購入する場合、希望する間取りが実現できるか、購入前に検討することをおすすめします。

購入後に「撤去したかった壁が構造壁だった」「希望する間取りに変更できなかった」と分かることもあります。

既存図面・構造図・設備図・管理規約を確認し、可能な範囲で現地調査を行う。

ただし、解体しなければ確認できない部分もあるため、購入前の検討には一定の不確定要素が残ります。

その点も理解したうえで、物件を選ぶことが重要です。

■ S・CAPE CONSULTINGが考えるリノベーション

リノベーションは、既存の建物を理解することから始まります。

構造、設備、躯体、共用部分、管理規約、既存建物の状態。

これらを確認し、変えられる部分と変えてはいけない部分を整理する。

そして、図面による事前検討だけで判断を完結させず、解体時に現況を確認して最終判断する。

「壊せない壁があるから、良い間取りができない」わけではありません。

既存の構造を理解し、その条件を活かしながら、新しい暮らしに合った空間を設計していく。

制約を理解し、その中で可能性を最大限に引き出すこと。

それも設計者の重要な役割だと考えています。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
一級建築士事務所

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#一級建築士 #マンションリノベーション #構造設計 #中古マンション

【RENOVATION PROJECT|解体検査】前回ご紹介したマンションのリノベーション。解体工事が進み、現場の確認を行いました。天井や壁、床の一部が取り払われ、仕上げに隠れていた下地や配線、天井裏の様子が見えてきました。前回お伝えした、...
17/10/2026

【RENOVATION PROJECT|解体検査】

前回ご紹介したマンションのリノベーション。
解体工事が進み、現場の確認を行いました。

天井や壁、床の一部が取り払われ、仕上げに隠れていた下地や配線、天井裏の様子が見えてきました。

前回お伝えした、
「何を残し、何を変えるのか。」

解体後の現場では、その判断をさらに具体的にしていきます。

既存の下地は、どこまで生かせるか。
配管や配線は、どこを通すか。
天井や床の高さは、計画どおりに納まるか。
新しい壁や建具を、既存部分とどうつなげるか。

図面と現場を照らし合わせながら、一つずつ確認していきます。

リノベーションでは、解体して初めて分かることがあります。事前に検討した設計も、実際に見えた状態や寸法を踏まえ、必要に応じて調整します。

壁の厚みや天井の高さ、設備の納め方。
こうした細かな判断の積み重ねが、完成後の使いやすさや、すっきりとした空間につながります。

間仕切りがなくなると、窓から入る光や、住戸全体の広がりも改めて感じられます。この住まいが持つ良さを、これからの空間に生かしていきたいと思います。

仕上がると見えなくなる部分まで、丁寧に。
ここから、新しい暮らしのための空間を少しずつ形にしていきます。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
一級建築士事務所

#マンションリノベーション #解体検査 #工事監理 #設計事務所

【ARCHITECT COLUMN|VOL.39】【一級建築士が教える】「スケルトンリノベーションなら、何でもできる?」― すべて解体しても、変えられないものがある。―中古マンションを購入して、自分好みの空間にリノベーションしたい。そんなと...
15/10/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.39】

【一級建築士が教える】

「スケルトンリノベーションなら、何でもできる?」

― すべて解体しても、変えられないものがある。―

中古マンションを購入して、自分好みの空間にリノベーションしたい。

そんなとき、選択肢の一つになるのが「スケルトンリノベーション」です。

床・壁・天井などの内装を撤去し、建物の躯体に近い状態から空間を再構成する方法です。

ただし、「全部壊せば自由に設計できる」というわけではありません。

■ ① スケルトンにしても構造は変えられない

RC造マンションでは、柱・梁・床スラブ・構造壁などが建物を支えています。

ラーメン構造では非構造壁を撤去できる場合がありますが、壁式構造では壁自体が構造上重要な役割を持ちます。

スケルトンにしたからといって、構造壁を自由に撤去したり、梁を削ったりすることはできません。

まず構造図を確認し、変更できる範囲を把握することが重要です。

■ ② 水回りは自由に移動できる?

キッチン・浴室・トイレなどの移動では、特に排水計画が重要になります。

排水管には適切な勾配が必要です。移動距離が長くなるほど床下に必要な寸法が増え、床を上げなければならない場合があります。

また、共用配管が通るパイプスペース(PS)は自由に移動できるものではありません。

希望する間取りだけでなく、排水経路や床下寸法まで確認する必要があります。

■ ③ 天井を撤去すれば高くなる?

二重天井を撤去すると、天井高を確保できる場合があります。

しかし、梁・配管・換気ダクトなどが残るため、必ずしも希望する高さになるとは限りません。

また、断熱性能、遮音性能、照明計画、設備のメンテナンス性なども検討が必要です。

■ ④ 共用部分は変更できない

マンションでは専有部分と共用部分を区別する必要があります。

窓サッシ、玄関扉、構造躯体、共用配管などは、一般的に共用部分として扱われます。

スケルトン工事でも、所有者が自由に変更できるわけではありません。

また、フローリングの遮音性能、工事時間、搬入、養生などについても管理規約や使用細則の確認が必要です。

■ ⑤ 築古マンションではアスベスト(石綿)に注意

特に築年数の古いマンションでは、解体前に確認しておきたいのが石綿含有建材です。

石綿は過去にさまざまな建材へ使用されていました。

例えば、ビニル床タイル、床材用接着剤、天井材、壁材、下地材、配管の保温材などです。

2006年9月以降は石綿含有製品の製造・使用等が原則禁止されていますが、古い建物では、それ以前の建材が残っている可能性があります。

ただし、築年数だけで石綿の有無を断定することはできません。

解体・改修工事では、原則として工事対象となる建材について法令に基づく事前調査が必要です。

調査は必要な資格を持つ調査者等が行い、書面調査・目視調査を実施します。石綿含有の有無が確認できない場合は、分析調査を行うか、石綿含有建材として取り扱う必要があります。

また、一定規模以上の解体・改修工事では、事前調査結果の行政への報告義務もあります。

石綿含有建材が見つかった場合には、建材の種類や作業内容に応じた飛散防止措置、適切な施工方法、廃棄物処理等が必要になります。

その結果、解体費用や工期が増える場合もあります。

「少し壊すだけだから大丈夫」「古い建物だけど見た目は普通だから問題ない」という判断は避けるべきです。

■ ⑥ 解体して初めて分かることがある

スケルトンリノベーションのメリットの一つは、隠れていた建物の状態を確認できることです。

例えば、躯体のひび割れ、漏水跡、配管の劣化、過去の改修跡、図面と異なる施工状況などです。

ただし、発見した問題をすべて自由に補修できるとは限りません。

共用部分に関係する不具合は、管理組合との協議が必要になる場合があります。

■ ⑦ 全部壊す方が安いとは限らない

スケルトンリノベーションでは、解体・廃材処分・下地再施工・設備更新などが必要になります。

さらに石綿含有建材が見つかった場合は、適切な除去・処理に伴う費用が発生することもあります。

そのため、部分的な改修と比較して工事費が高くなる場合があります。

一方、既存の間取りや設備を大幅に変更する計画では、全面的に解体した方が施工範囲や納まりを整理しやすいこともあります。

つまり、スケルトンが必ず高い、あるいは必ず合理的ということではありません。

何を実現したいのかによって、適切な解体範囲は変わります。

■ ⑧ スケルトンにする前に設計する

「とりあえず全部壊してから考えよう」という進め方はおすすめしません。

解体前に既存図面・管理規約・設備条件・石綿調査の必要事項を確認し、希望する間取りが成立するか検討することが重要です。

必要に応じて部分的な先行調査を行い、解体後に確認する事項も整理しておきます。

■ S・CAPE CONSULTINGが考えるスケルトンリノベーション

スケルトンリノベーションの魅力は、既存の間取りにとらわれず、暮らし方に合わせて空間を再構成できることです。

ただし、すべてを自由に変更できるわけではありません。

構造・設備・共用部分・管理規約・石綿・予算。

こうした条件を理解したうえで、可能性を最大限に引き出すことが重要です。

私たちは、必ずしもすべてを解体することが正解だとは考えていません。

残せるものは残す。変えるべきものは変える。

大切なのは「どこまで壊すか」ではなく、「何を実現するために壊すのか」。

既存建物の状態を読み、これからの暮らしに合った空間をつくる。

それがリノベーション設計の本質だと考えています。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
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#一級建築士 #スケルトンリノベーション #アスベスト #リノベーション

S・CAPE MATERIAL NOTE|素材を選ぶvol.01 床材の選び方床は、毎日触れる、空間の土台。色や柄だけでなく、足触りや掃除のしやすさ、傷との付き合い方まで考えると、暮らしに合う素材が見えてきます。今回は、代表的な6種類の床材...
10/10/2026

S・CAPE MATERIAL NOTE|素材を選ぶ
vol.01 床材の選び方

床は、毎日触れる、空間の土台。

色や柄だけでなく、足触りや掃除のしやすさ、傷との付き合い方まで考えると、暮らしに合う素材が見えてきます。

今回は、代表的な6種類の床材について、長所・短所と、おすすめの場所をご紹介します。

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01|フローリング
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木の表情と温もりを楽しめる床材。

【長所】
木目が空間に柔らかな印象を与え、タイルに比べて足裏に冷たさを感じにくい素材です。

【短所】
傷やへこみ、水分による変色・伸縮に注意が必要。無垢・複合、表面の仕上げによって、質感や手入れの方法が変わります。

【おすすめの場所】
リビング、寝室、子ども部屋など、素足でくつろぐ空間。

━━━━━━━━━━━━
02|塩ビタイル
━━━━━━━━━━━━
木目や石目など、多彩な表情を選べる床材。

【長所】
柄が豊富で、日常の掃除がしやすいことが魅力。傷んだ部分だけを張り替えることも可能です。

【短所】
天然木や石とは触感が異なります。熱や下地の凹凸の影響を受けやすく、継ぎ目からの水の浸入にも注意が必要です。

【おすすめの場所】
キッチン、洗面室、店舗、オフィスなど、デザインと手入れのしやすさを両立したい場所。

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03|タイル
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硬質な質感と、目地の割り付けを楽しむ床材。

【長所】
磁器質タイルは傷・摩耗・水に強く、質感を長く保ちやすい素材です。

【短所】
硬く、冷たく感じやすいことがあります。目地の清掃や、衝撃による割れにも注意。濡れる場所では滑りにくさの確認が大切です。

【おすすめの場所】
玄関、土間、洗面室、テラスなど。屋内外や水濡れの条件に合う製品を選びます。

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04|長尺シート
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広い面を、少ない継ぎ目で仕上げる床材。

【長所】
清掃しやすく、耐摩耗性や防滑性など、用途に合わせた性能を選べます。

【短所】
傷んだ部分を補修すると、跡が目立つ場合があります。下地の凹凸や接着状態も、仕上がりを左右します。

【おすすめの場所】
洗面室、トイレ、廊下、診療所など、清掃性や日常の使いやすさを重視する場所。

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05|モルタル金鏝仕上げ
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鏝の跡や色むらが、素材の表情になる床。

【長所】
継ぎ目を抑えた一体感と、素朴な風合いが魅力。木や金属など、異なる素材との組み合わせも楽しめます。

【短所】
ひび割れや色むらが生じやすく、無保護の状態では汚れが染み込みやすい素材です。防塵・防汚の表面保護も合わせて考えます。

【おすすめの場所】
玄関土間、アトリエ、店舗など、経年変化を味わいとして楽しめる場所。

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06|塗床
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樹脂などを塗り、連続した面をつくる床。

【長所】
継ぎ目を抑えて仕上げられ、耐摩耗性・耐薬品性・防滑性などを用途に合わせて選べます。

【短所】
下地の水分やひび割れ、処理不足によって、膨れ・剥離が生じることがあります。補修跡が目立つ場合もあります。

【おすすめの場所】
ガレージ、作業室、店舗、厨房など。水・油・熱の条件に合わせた樹脂と工法の選定が必要です。

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素材には、それぞれ得意な使い方があります。

素足で過ごすのか。
水や油を使うのか。
傷や色の変化を、どう受け止めたいのか。

「好きな見た目」に「使い方」を重ねることが、素材選びの大切な一歩です。

S・CAPEでは、素材の組み合わせから間取りまで、暮らしに合わせて住まいを考えます。
新築・リノベーションのご相談は、DMまたは公式サイトへ。

次回は「壁材の選び方」をご紹介します。

※長尺シートはビニル床シート、塗床は樹脂系を中心に紹介しています。性能は製品・仕上げ・施工方法によって異なります。

#素材選び #床材選び #住宅設計 #リノベーション

【ARCHITECT COLUMN|VOL.38】【一級建築士が教える】「中古マンション、間取りはどこまで変えられる?」― 壁を壊せば、自由に間取りを変更できるわけではない。―中古マンションを購入して、自分好みの間取りにリノベーションしたい...
10/10/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.38】

【一級建築士が教える】

「中古マンション、間取りはどこまで変えられる?」

― 壁を壊せば、自由に間取りを変更できるわけではない。―

中古マンションを購入して、自分好みの間取りにリノベーションしたい。

「壁を全部壊して広いLDKにしたい」「キッチンを窓際に移動したい」「和室をなくして一つの空間にしたい」

こうしたご相談をいただくことがあります。

確かにマンションリノベーションでは、既存の間取りを大きく変更できる場合があります。しかし、室内をすべて解体すれば自由に設計できるわけではありません。

今回は、間取り変更を考える際に確認しておきたいポイントを解説します。

■ ① 構造によって撤去できる壁が違う

RC造マンションには、主にラーメン構造と壁式構造があります。

ラーメン構造は、柱と梁を主体に建物を支える構造です。住戸内の非構造壁は撤去できる場合が多く、比較的自由に間取りを変更できます。

一方、壁式構造は壁そのものが建物を支えています。構造上必要な壁は、原則として自由に撤去できません。

また、ラーメン構造でも柱や梁、構造壁を自由に変更できるわけではありません。

「壁に見えるから撤去できる」と判断せず、構造図や既存図面で確認することが重要です。

■ ② 水回りはどこまで移動できる?

キッチン、浴室、洗面、トイレの位置変更には、給排水設備が大きく関係します。

特に注意したいのが排水です。

排水管には適切な勾配が必要です。キッチンを遠くへ移動すると、排水管を長くする必要があり、床下の高さが不足する場合があります。

その結果、床を上げる、段差を設ける、計画を変更するなどの対応が必要になることもあります。

また、排水管の接続先となるパイプスペース(PS)は、共用部分を含む場合があり、自由に移動できるものではありません。

水回りの移動は、間取りだけでなく、排水経路・勾配・床下寸法まで確認して判断します。

■ ③ 天井を高くできるとは限らない

「天井を解体して、コンクリートを見せたい」という希望もあります。

しかし、天井裏には梁、換気ダクト、給排水管、電気配線などが通っていることがあります。

天井を撤去しても、設備配管や梁が残るため、希望する高さを確保できない場合があります。

また、直天井にすることで、断熱・遮音・照明計画などに影響する可能性もあります。

天井高は、既存の躯体と設備条件を確認したうえで計画する必要があります。

■ ④ 窓や玄関扉は自由に変更できない

マンションでは、専有部分と共用部分を区別する必要があります。

一般的に、窓サッシや玄関扉などは共用部分として扱われるため、所有者の判断だけで自由に交換・変更できるとは限りません。

例えば、窓を大きくする、サッシの色を変える、玄関扉を交換する、といった工事には制限がある場合があります。

一方、内窓の設置などは、管理規約や施工条件を確認したうえで実施できる場合があります。

■ ⑤ 管理規約による制限もある

構造的・技術的に施工できる工事でも、管理規約や使用細則によって制限されることがあります。

例えば、フローリングの遮音性能、工事可能時間、搬入経路、共用部分の養生、工事申請、近隣住戸への通知などです。

特に床材を変更する場合は、管理組合が指定する遮音性能や施工方法を確認する必要があります。

「技術的にできる工事」と「マンションで認められる工事」は、必ずしも同じではありません。

■ ⑥ 中古マンションは購入前の確認が重要

中古マンションを購入してから、

「希望していた壁が撤去できない」
「キッチンを移動できない」
「床を上げる必要がある」
「希望する工事が管理規約で認められない」

と分かることもあります。

そのため、リノベーションを前提に購入する場合は、事前に建築図面・構造図・設備図・管理規約・過去の改修履歴などを確認することをおすすめします。

ただし、既存図面が現況と一致しているとは限りません。必要に応じて現地調査を行い、解体後に確認すべき事項も整理しておきます。

■ S・CAPE CONSULTINGが考えるマンションリノベーション

リノベーションの魅力は、既存の建物を活かしながら、新しい暮らしに合わせて空間を再構成できることです。

しかし、理想の間取りを先に描いてから、実現できるかどうかを確認するだけでは、設計変更や予算超過につながることがあります。

大切なのは、既存建物の条件を理解すること。

構造、設備、採光、天井高、共用部分、管理規約。

これらの条件を整理したうえで、何ができるのか、何が難しいのかを判断する。

制約があるから良い設計ができないのではありません。制約を理解したうえで、可能性を最大限に引き出すことが設計者の役割だと考えています。

中古マンションを購入する前から建築士が関わることで、物件選定とリノベーション計画を一体的に検討することもできます。

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#一級建築士 #中古マンション #マンションリノベーション #リノベーション

【ARCHITECT COLUMN|VOL.37】【一級建築士が教える】「図面通りにつくれば、同じ建物になる?」― 図面だけでは決まらない、施工品質と工事監理の話。―同じ設計図。同じ材料。同じ設備。それなら、どの施工会社がつくっても同じ建物...
07/10/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.37】

【一級建築士が教える】

「図面通りにつくれば、同じ建物になる?」

― 図面だけでは決まらない、施工品質と工事監理の話。―

同じ設計図。
同じ材料。
同じ設備。

それなら、どの施工会社がつくっても同じ建物になるのでしょうか?

必ずしもそうではありません。

建築は工場で完成品を購入する商品とは違い、設計図をもとに、現場で多くの人が施工して完成させるものです。

そのため、図面が同じでも施工体制や現場での判断によって、完成度に差が生まれることがあります。

■ 設計図には何が書いてある?

設計図書には、

寸法。
材料。
仕上げ。
設備。
建具。
照明。
構造。
納まり。

など、建物をつくるために必要な情報を記載します。

設計者は、完成する建築を図面・仕様として施工者へ伝えます。

しかし、建築に必要なすべての情報を、一本一本の線ですべて表現できるわけではありません。

実際の施工段階では、さらに細かな検討が必要になります。

■ 現場では「取り合い」が発生する

例えば、

壁と天井。
床と建具。
家具とコンセント。
タイルと水栓。
照明と天井下地。
空調と梁。
設備配管と構造。

建築では複数の工種が同じ場所に関係します。

これを「取り合い」と呼びます。

図面上では成立していても、実際の施工寸法や製品寸法を確認すると、数ミリ・数センチの調整が必要になることがあります。

こうした部分をどう納めるかが、完成度に影響します。

■ 同じ材料でも仕上がりは変わる

例えばタイル。

同じタイルを使用しても、

どこを基準に張り始めるか。
目地幅をどうするか。
端部をどう納めるか。
設備機器と目地をどう合わせるか。

によって見え方は変わります。

フローリングでも、

張り方向。
割付。
壁際の納まり。
見切り。
建具との取り合い。

で印象が変わります。

塗装なら、

下地処理。
塗装回数。
艶。
施工精度。

も仕上がりに影響します。

「同じ商品を使っている=同じ完成度」

ではありません。

■ 施工図も重要

実際の施工段階では、設計図をもとに施工会社や専門業者が「施工図」を作成することがあります。

例えば、

家具。
建具。
鉄骨。
設備。
空調。
電気。
サッシ。

など。

施工図では、実際に製作・施工できる寸法や納まりまで具体化します。

設計図と施工図は同じものではありません。

設計者が意図した空間を、施工可能な情報へ落とし込んでいくプロセスが必要になります。

■ サンプルで確認する理由

素材も図面だけでは判断できません。

木。
石。
タイル。
塗装。
クロス。
金属。

色番号や品番が同じでも、実際の素材感や光の当たり方によって印象が変わります。

そのため設計では、必要に応じて実物サンプルを確認します。

複数の素材を並べて、

色。
艶。
質感。
目地。
周囲の素材との相性。

を確認する。

こうした積み重ねも、完成度を左右します。

■ 現場監督の役割

施工会社の現場監督は、建物を実際につくるために、

工程。
品質。
安全。
職人。
材料。
施工方法。

などを管理します。

良い図面があっても、適切な施工管理がなければ建築は完成しません。

特に多くの専門業者が関わる建築では、それぞれの工事をつなぐ現場監督の役割は非常に重要です。

■ 工事監理は何をする?

一方、設計者が行う「工事監理」は、施工会社の「施工管理」と同じ仕事ではありません。

設計者は、工事が設計図書と整合しているかを確認します。

また、

施工図。
材料サンプル。
色。
納まり。
寸法。
設計変更。

などについて、施工者と確認・調整を行います。

つまり、

施工会社は「建物をつくる側」。

設計者は「設計した内容が建築として実現されているかを確認する側」。

それぞれ役割が違います。

■ 図面に書いていないから、何でも施工者判断ではない

現場では、図面だけでは判断できない部分が出ることがあります。

そのとき、

「図面に書いていないから現場で適当に決める」

ではありません。

設計意図を確認し、

施工方法。
見え方。
他工種との取り合い。
メンテナンス性。

などを考えながら決めます。

この設計者と施工者のコミュニケーションも重要です。

■ だから施工会社は「価格だけ」で選ばない

同じ図面を複数社へ相見積した場合、金額に差が出ます。

もちろん価格は重要です。

しかし施工会社を選ぶときには、

施工実績。
現場監督の体制。
職人との関係。
施工図への対応。
サンプル確認。
設計者との打合せ。
品質管理。

なども確認したいところです。

「同じ図面だから、一番安い会社でも完成するものは同じ」

とは限りません。

■ S・CAPE CONSULTINGが考える建築の完成度

良い建築は、

設計者だけではつくれません。

施工会社だけでもつくれません。

職人だけでもつくれません。

設計者が考え、
図面にする。

施工会社が施工方法を考え、
現場を管理する。

職人が技術を使って施工する。

設計者が工事監理を行い、
設計図書との整合や設計意図を確認する。

この積み重ねで建築は完成します。

だから、

「図面通りにつくれば、どこが施工しても同じ」

ではありません。

同じ図面でも、
完成する建築の質は変わることがあります。

図面は建築の完成形ではなく、
建築をつくるための重要な設計情報。

そして、

その図面を実際の建築へ変えるのは「現場」です。

設計・施工・工事監理。

それぞれが適切に機能することが、建築の完成度を高めるために重要だと考えています。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
一級建築士事務所

Scale to Environment.
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TEL|080-7032-0788

#一級建築士 #工事監理 #施工会社 #建築設計

【RENOVATION PROJECT|BEFORE】これから、マンションのフルリノベーションが始まります。既存の室内には、木部、障子、襖、畳など、以前の住まいの面影がかなり残っています。リノベーションというと、「古いものを全部壊して、新し...
01/10/2026

【RENOVATION PROJECT|BEFORE】

これから、マンションのフルリノベーションが始まります。

既存の室内には、
木部、障子、襖、畳など、
以前の住まいの面影がかなり残っています。

リノベーションというと、
「古いものを全部壊して、新しくする」
と思われがちですが、
私たちは必ずしもそれだけが正解だとは考えていません。

まず既存の建物を調査し、

何を残せるのか。
何を変えるべきなのか。
どこまで解体するのか。
現在の暮らしにどう合わせるのか。

を整理してから設計していきます。

今回も、単純に内装を新しくするのではなく、

既存の間取りや構造、
配管・設備、
採光、
素材、
そしてこの住戸が持っている雰囲気を読みながら、

今の暮らしに合う空間へ再構成していきます。

特にマンションリノベーションでは、
解体して初めて分かることもあります。

図面と現況が違う。
想定していた場所に配管が通っていない。
下地や躯体の状態が想定と違う。

そうした既存建物特有の条件も、
一つずつ確認しながら設計・施工を進めます。

完成した空間だけでなく、

BEFORE
↓
解体
↓
設計・施工
↓
AFTER

まで、今回のリノベーションの過程もご紹介していきます。

古いものを、ただ新しくするのではなく。

この住戸にあるものを読み、
これからの暮らしに合わせて再設計する。

リノベーションが始まります。

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#マンションリノベーション #リノベーション #一級建築士 #設計事務所

【ARCHITECT COLUMN|VOL.36】【一級建築士が教える】「設計変更は、いつまでできる?」― 変更できることと、追加費用がかからないことは別。―家づくりやリノベーションの打合せでは、「やっぱり間取りを変えたい」「キッチンを変更...
30/09/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.36】

【一級建築士が教える】

「設計変更は、いつまでできる?」

― 変更できることと、追加費用がかからないことは別。―

家づくりやリノベーションの打合せでは、

「やっぱり間取りを変えたい」
「キッチンを変更したい」
「窓を大きくしたい」
「コンセントを追加したい」
「仕上げ材を変えたい」

ということがあります。

設計変更そのものは珍しいことではありません。

むしろ設計中に検討を重ね、より良い案へ変更していくことも設計プロセスの一つです。

ただし、同じ変更でも「いつ変更するか」によって、費用・工期・設計業務への影響は大きく変わります。

■ 基本設計中|比較的変更しやすい

基本設計は、間取り・ボリューム・デザイン・主要な仕様などを検討する段階です。

この時期は、まだ詳細設計や材料発注へ進んでいないため、比較的変更しやすい段階です。

だからこそ、

間取り。
生活動線。
設備。
収納。
デザイン。
予算。

などについて、できるだけこの段階で検討します。

ただし「基本設計中なら何回変更しても同じ」という意味ではありません。

決定したプランを何度も白紙に戻し、大幅な再設計を繰り返せば、設計期間や業務量は当然増えます。

■ 実施設計中|一つの変更が複数図面へ影響する

実施設計に入ると、

平面詳細。
展開図。
天井。
照明。
コンセント。
建具。
設備。
仕上げ。
構造。

など、工事に必要な情報を具体化していきます。

例えばキッチンの位置を変更するだけでも、

給排水。
電気。
換気。
照明。
天井。
床。
家具。
建具。

などへ影響する可能性があります。

つまり、設計が進むほど「一つだけ変更する」ということが難しくなっていきます。

■ 見積中|変更すると再積算が必要になる

基本設計後に施工会社へ見積を依頼した後でも変更は可能です。

ただし設計内容を変更すれば、施工会社も見積を修正する必要があります。

材料数量を拾い直す。
専門業者へ再見積を依頼する。
工法を再検討する。

などの作業が発生します。

変更回数が増えれば、見積確定までの期間も長くなります。

■ 工事契約・発注後|「まだ工事していない」でも費用が発生することがある

ここは誤解されやすいところです。

「まだ取り付けていないから変更できますよね?」

という場合でも、すでに商品を発注している可能性があります。

例えば、

キッチン。
ユニットバス。
サッシ。
建具。
タイル。
照明。
空調。
造作家具。

など。

製作開始後や発注後なら、キャンセル費や返品不可、再発注費などが発生することがあります。

現場にまだ付いていないことと、費用が発生していないことは別です。

■ 施工中|見えないところでは工事が進んでいる

施工中も同じです。

例えば、

「この壁にコンセントを追加したい」

という変更。

仕上げ前だから簡単に見えるかもしれません。

しかし壁の中では、

下地。
断熱材。
配線。
配管。

などがすでに施工されている場合があります。

変更するために既存施工部分を撤去し、配線を変更し、下地を復旧し、仕上げをやり直せば、当然追加費用が発生する可能性があります。

■ 「変更できますか?」と「無料ですか?」は別

ここが今回、最もお伝えしたいポイントです。

建築では、技術的には変更可能なことがたくさんあります。

しかし、

変更可能
=
追加費用なし

ではありません。

確認したいのは、

変更できるのか。
追加工事はいくらか。
設計変更はいくらか。
材料は発注済みか。
工期は延びるのか。
他の工事へ影響するのか。

までです。

■ 工事費だけでなく、設計業務も増える

設計変更では、施工会社だけが作業するわけではありません。

設計者にも、

プランの再検討。
図面修正。
仕様変更。
構造・設備との再調整。
施工会社への説明。
見積内容の確認。
現場への変更指示。

などが発生します。

特に、

決定済みプランを大幅に変更する。
実施設計完了後に間取りを変更する。
施工中に何度も仕様を変更する。

といった場合、当初の設計契約で想定していた業務範囲を超える可能性があります。

その場合、変更内容や時期によっては追加設計料が必要になることもあります。

■ 設計変更は「施主都合」だけではない

設計変更というと、

「お客様が途中で希望を変えた」

というイメージがありますが、それだけではありません。

例えば、

行政との協議。
法規上の条件。
構造検討。
施工上の納まり。
メーカーの廃番・仕様変更。
材料の供給状況。
現場条件。

などによって変更が必要になることもあります。

■ リノベーションは「解体後に分かる」ことがある

特にリノベーションでは、新築とは違う難しさがあります。

壁を解体したら柱があった。
図面と配管位置が違った。
構造材が劣化していた。
下地が想定と違った。
過去の増改築が判明した。

など、工事前には確認できなかった状況が見つかることがあります。

この場合は、現況に合わせて設計・施工方法を変更する必要があります。

だからリノベーションでは、一定の変更可能性や予備費も考えて計画することが重要です。

■ では、いつまでに決めればいい?

理想は、

「基本設計で大きな方向性を決める」

ことです。

間取り。
設備。
主要な素材。
デザイン。
予算。

など、建築の骨格となる部分は基本設計中にしっかり検討する。

その後、実施設計で詳細を詰め、発注・施工へ進む。

もちろん、すべてを最初から完璧に決めることはできません。

現場で確認して決めた方が良いこともあります。

重要なのは、

「今決めるべきこと」と
「後で決めても問題ないこと」

を設計者と整理することです。

■ S・CAPE CONSULTINGが考える設計変更

設計変更は悪いことではありません。

より良い建築にするために、設計途中で変更することもあります。

ただし、

基本設計。
実施設計。
見積。
発注。
施工。

と工程が進むほど、変更による影響範囲は広くなります。

だから、

「変更できますか?」

だけではなく、

「今変更すると、何が変わるのか?」

を確認する。

工事費。
設計料。
工期。
発注済み材料。
他工種への影響。

ここまで確認してから変更を判断する。

設計変更は、

早いほど選択肢が多く、
影響を小さくしやすい。

だからこそ基本設計の段階で、時間をかけて検討する意味があります。

「後から変えればいい」ではなく、

「今、決められることは今決める」。

それが工事費・工期・設計品質をコントロールするうえで重要だと考えています。

株式会社 S・CAPE CONSULTING
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#一級建築士 #設計変更 #家づくり #リノベーション

【ARCHITECT COLUMN|VOL.35】【一級建築士が教える】「相見積は3社取れば安心?」― 見積を取る前から、建築費の管理は始まっている。―「相見積は何社くらい取った方がいいですか?」よくいただく質問です。私たちが基本的におすす...
29/09/2026

【ARCHITECT COLUMN|VOL.35】

【一級建築士が教える】

「相見積は3社取れば安心?」

― 見積を取る前から、建築費の管理は始まっている。―

「相見積は何社くらい取った方がいいですか?」

よくいただく質問です。

私たちが基本的におすすめしているのは「2社程度」です。

1社では比較対象がありません。一方、3社・4社・5社と増やせば、その分だけ良い施工会社が見つかるとも限りません。

相見積は、単に複数の見積金額を並べる作業ではないからです。

■ 相見積は「同じ条件」で比較する

例えば、

A社 4,800万円
B社 5,100万円

なら、A社の方が安く見えます。

しかし、A社には空調・照明・外構が含まれておらず、B社には含まれているかもしれません。

工事範囲、数量・単価、見積除外、仮設・諸経費、工期、施工体制、保証、支払条件などを揃えて初めて比較できます。

「安い」というイメージではなく、同じ条件で比較することが重要です。

■ 基本設計完了時に2社程度へ相見積

私たちは、基本設計がまとまった段階で相見積を行う流れを基本としています。

建物規模、間取り、主要仕様、設備などがある程度決まってから、発注候補となる2社程度へ同じ条件で見積を依頼します。

施工会社が増えれば、各社からの質疑、図面補足、見積内容の精査、抜け漏れ確認、条件整理なども増えます。

当然、見積期間も長くなり、設計事務所側の業務量も増えます。

そのため「とりあえず5社」ではなく、本当に発注候補となる会社へ絞って依頼することをおすすめしています。

■ 比較後は1社に決めてVEへ

相見積後も、複数社を最後まで値下げ競争させ続けるわけではありません。

金額だけでなく、施工実績、現場体制、工期、保証、担当者の対応などを比較し、施工候補を1社に決定します。

その後、選定した1社とVE・減額調整を進めます。

何を残すのか。
何を変えるのか。
何をやめるのか。

材料、設備、施工方法、造作、仕上げ範囲などを整理して予算へ近づけていきます。

つまり、

「相見積=施工会社を比較・選定する段階」

「VE=選定した施工会社と予算を調整する段階」

です。

■ 予算管理は、相見積より前から始まっている

理想やイメージだけでプランをつくり、設計を進め、最後に初めて見積を取った結果、

「3,000万円くらいだと思っていたのに6,000万円だった」

となる。

こうした大きな乖離は、できるだけ避けたいところです。

そのため設計初期から、規模・構造・仕様などが近い過去の事例を参考にして予算感を確認します。

■ 過去事例は「現在価格」に補正する

ただし、

「2年前に3,000万円だったから、今回も3,000万円」

とは考えません。

建材価格、労務費、運送費、エネルギー価格、メーカーの価格改定などによって建築費は変化します。

さらに地域、敷地条件、搬入条件、構造、仕様によっても変わります。

過去事例は価格表ではなく「物差し」。

過去の類似事例に、現在の物価・労務費・メーカー価格改定・今回の条件を反映しながら、設計途中でも予算を確認していきます。

■ 思い込みや先入観で決めない

「大手だから高い」
「小さな工務店だから安い」
「地方の会社だから安い」
「紹介だから安心」

こうしたイメージだけで施工会社を決めないことも重要です。

相見積には、こうした思い込みを実際の数字と条件で確認する意味もあります。

■ 見積が予算の2倍だったら?

見積が大幅に予算を超えると、

「施工会社が高すぎる」
「設計事務所が予算を考えていない」

という話になりがちです。

もちろん設計者にも、設計途中で概算を確認し、予算との乖離を把握する役割があります。

一方で、

そもそも希望している建物規模・設備・仕様・デザインが、当初予算で実現可能だったのか。

という確認も必要です。

理想をすべて盛り込んだ建築と、予算内で実現できる建築は必ずしも同じではありません。

複数社から近い価格の見積が出ているのであれば、3社目、4社目を探し続けるより、設計内容と予算そのものを見直す必要がある場合もあります。

■ 「見積は無料」が当たり前とは限らない

建築工事の見積は、金額を書き込むだけではありません。

施工会社は図面を読み、数量を拾い、材料価格を確認し、専門業者へ見積を依頼し、施工方法や現場条件を検討して金額をまとめます。

規模が大きくなるほど、相応の時間と人件費がかかります。

これまで「契約前の見積は無料」という商習慣が広くありましたが、詳細な積算・見積作成を無償業務として当然視しない考え方も出てきています。

概算までは無料。
詳細積算は有料。
契約した場合は見積作成費を工事代金へ充当する。

こうした考え方もあります。

だから、

「無料だから、とりあえず何社にも見積を依頼する」

ではなく、本当に発注候補となる施工会社へ依頼する。

5社へ依頼すれば、発注者には5枚の見積書でも、施工会社側では5社それぞれが積算業務を行っています。

さらに設計事務所側にも、各社への質疑対応・条件整理・比較業務が発生します。

■ S・CAPE CONSULTINGが考える相見積

基本的な流れは、

予算設定
↓
過去事例を現在価格へ補正
↓
基本設計
↓
2社程度で相見積
↓
条件を揃えて比較
↓
施工候補を1社に決定
↓
1社とVE・減額調整
↓
詳細設計・最終見積
↓
工事請負契約

です。

相見積は「一番安い会社」を探すためだけのものではありません。

思い込みや先入観を数字と条件で確認し、価格・品質・施工体制・対応力まで含めて、

「この建築を任せられる施工会社」

を選ぶためのプロセスです。

何社から見積を取ったかより、
どれだけ精度の高い比較ができたか。

そして建築費は、最後の見積で初めて知るものではなく、過去事例・現在の物価・概算・相見積・VEを使いながら、

「設計と並行して管理していくもの」

だと考えています。

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#一級建築士 #相見積 #建築費 #家づくり

森のそばで、土地の可能性を考える。建物や擁壁に囲まれた景色よりも、木々の緑に包まれる風景に心が動く。この土地には、そんな魅力があります。すぐそばにレッドゾーンがあるからこそ、地形や規制を丁寧に読み、建てる場所と暮らす場所を慎重に考えたい。自...
26/09/2026

森のそばで、土地の可能性を考える。

建物や擁壁に囲まれた景色よりも、木々の緑に包まれる風景に心が動く。この土地には、そんな魅力があります。

すぐそばにレッドゾーンがあるからこそ、地形や規制を丁寧に読み、建てる場所と暮らす場所を慎重に考えたい。自然の豊かさと向き合いながら、この土地ならではの住まいを描く。そのために、建築家がいるのだと思います。

住所

大崎2-7/12
Shinagawa-ku, Tokyo
141-0032

営業時間

月曜日 09:00 - 18:00
火曜日 09:00 - 18:00
水曜日 09:00 - 18:00
木曜日 09:00 - 18:00
金曜日 09:00 - 18:00
土曜日 09:00 - 18:00
日曜日 09:00 - 18:00

電話番号

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